ハラビロトンボ

秋になるとよく見かけるようになるトンボ。昆虫に詳しくないと、どれも同じに見えるかもしれませんが、トンボにもさまざまな種類がいます。そのなかでも、絶滅が懸念されているのが「ハラビロトンボ」です。

「ハラビロトンボ」とは、トンボ科ハラビロトンボ属のトンボの一種で、名前の“ハラビロ”には“腹広”という意味があります。日本では、北海道から本州、四国、九州に生息していて、北海道では函館と長万部だけで確認されています。

国際自然保護連合の軽度懸念の指定を受けていて、北海道の絶滅危惧種の指定を受けています。それだけでなく、千葉、東京、青森、神奈川、富山、鹿児島などの都道府県でも重要保護生物や絶滅危惧II類、少野生生物Cランク、要注意種などの指定を受けています。
日本の北から南まで広く生息していて、北海道だけに生息しているわけではないのですが、どの地域でも絶滅が懸念されているということです。

そんなハラビロトンボは、成虫になっても体長が31~39mmとそんなに大きくならない小型のトンボなのですが、体長のわりに腹部がとにかく太くて短い独特の体系をしていて、特にメスのほうがその特徴が目立ちます。
ハラビロトンボのメス

未熟なうちは、オスもメスも全身が黄色い色をしていますが、成熟するにつれて、オスは全身が黒くなった後に腹部背面が青白い粉を帯びるようになるのですが、メスは、全身の黄色が濃くなる程度で白っぽくなるものもいます。
ハラビロトンボのオス

幼虫は毛深いヤゴで、常にたくさんの泥を付けています。そのため、他のトンボより乾燥に強く、水が干上がってもある程度は泥の中で生きていけるとされています。

成虫は、平地の浅い池沼、湿地、休耕田などで羽化し、日本の早いところでは4月下旬頃から羽化が始まり、遅いところでは9月頃まで見られます。
羽化したら、その場所から近くの草むらで接触活動を行い、あまり遠くまで移動しません。

成熟したオスは、狭いながらも縄張りをつくり、メスを見つけると交尾をしています。産卵は、メスが単独で行う打水産卵で、抽水植物の陰に隠れるようにして行い、オスは、少し上空でメスを見守っています。
シオヤトンボとの異種間交尾が見られることもあるようです。

トンボのような昆虫などは絶滅危惧種と言われてもあまり実感がないかもしれませんが、確かに数は減ってきています。どんな生物でもいなくなってしまえば、生態バランスが崩れ少なかれ影響があると思います。絶滅ということにならないのを願うばかりです・・・。

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