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リシリヒナゲシ

近年、環境問題が騒がれるようになってから「レッドデータブック」という言葉も耳にするようになりました。これは絶滅の恐れのある野生生物の種をリストアップし、その生息状況を解説した資料のことです。

1966年に国際自然保護連合(IUCN)が絶滅の恐れのある野生生物のリストを刊行し、その後世界各国で国内版のレッドデータブックが作られました。

 このデータブックには哺乳類、鳥類、爬虫類、昆虫類など様々な動物の他に、植物もピックアップされています。今回はその中から、北海道の植物を紹介したいと思います。

 リシリヒナゲシという花は、「IA類ほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性が高い種」である「絶滅危惧IB類(EN)」に登録されています。

 

 これまで動物の絶滅危惧種に焦点を当て、いくつかの生物を紹介しましたがそのほとんどが、ペットとして個人で飼うことのできない動物でした。そのため絶滅の危機にあるからといって、自宅で繁殖、というわけにもいかず、支援活動はできても実際の繁殖や飼育は専門家に任せるしかない状況でした。

 

 しかし植物となると話は別で、特別なものを除けばタネを販売元から入手し、自宅で育てていくことができます。たとえ万が一にも自生するものがなくなってしまっても、支援者が頑張ればその種を繋いでいくことができるのです。そう考えると、広い範囲で多くの人が同時に協力できるので、問題は解決しそうな気がします。

 

 しかし、大事なのはただその花が咲いていることだけではなく、やはり自生するものがあるかどうかなのです。そもそも、本来そこにあるべきものが自生できなくなるということは、環境が悪くなった、もしくは種の方に異変が発生したということです。その時点で問題は深刻です。

 

 このリシリヒナゲシも、自生のものは利尻山の山頂付近にしかありません。利尻山とは北海道北部、日本海上に浮かぶほぼ円形の利尻島にある山です。

 

日本最北の島に美しい姿を見せる利尻山は別名「利尻富士」とも呼ばれます。山頂からの景色をさえぎるものは何もなく、360℃の大パノラマが楽しめます。日本百名山百選にも選ばれているので、北海道旅行で立ち寄るにもおすすめです。遠くの景色を堪能したら、足元の小さな花にも注目してみて下さいね。

 

リシリヒナゲシはケシ科ケシ属の多年草、利尻島の固有種であり、日本に自生する唯一のケシの仲間です。野生のヒナゲシは世界で唯一種、とも言われます。

 

透き通るような黄色い花は繊細で、守ってあげたくなるような雰囲気を出しています。いや、本当に守っていかなきゃいけないところなんですけどね……。

 

幸いなことにタネがつき、よく増える種なので、島の平地のあちこちでも観光用に咲かせています。よってその姿は至るところで見受けられますが、自生のものが絶滅の危機に瀕していることは忘れてはいけません。

 草丈は10cm~20cmくらいです。茎先に黄色い4弁花を1輪つけますが、それは薄く可憐な印象を与えます。北海道の雰囲気にぴったりの可愛らしい花なので、この花の住める環境を守り続けたいと思います。