ウミガラス
ウミガラスはチドリ目・ウミスズメ科に分類される海鳥の一種で、鳴き声が「オロロン」とか「オロオロオロ」と聞こえたことから「オロロン鳥」とも呼ばれています。
体長は約40cm、体重は約1160gと、ウミスズメ科の中では最大で、背中の部分は黒く、お腹の部分が白い。
くちばしは長く、翼も尾も短い。脚が尾の近くにあって、陸上を歩く姿はペンギンに似ていてとても愛らしい。けれど、実は陸上を歩くのが苦手だったりします。
ペンギンに似た姿をしていても、ペンギンと違って空を飛ぶことができます。空を飛ぶ時は、短い翼を高速で羽ばたかせ海面の近くを飛びます。
水中を潜るのは上手で、水深50mを約3分潜水できたり、最深記録は約180mにもなります。巧みに潜水してはイカ、シシャモ、稚魚、イカナゴ、カジカ、ギンポなどを捕まえてエサとしています。
繁殖期には、無人島や陸生の捕食者が近づけないような崖や崖の上に集団で繁殖地を作るのですが、巣は作らず岩や土の上に直接1個の卵を産みます。転がっていかないか心配になってしまいますが、卵は「セイヨウナシ型」と呼ばれる一端が尖った形をしていて、転がってもその場で円を描くように転がるため断崖から落ちにくいようになっているのです。それにもし、卵がなくなってしまっても一度だけ産みなおすことができるのだとか・・・。
繁殖開始年齢は平均5歳で、それから約20年は繁殖をします。
生まれたヒナは生後平均21日間は繁殖地にとどまり、親鳥の半分くらいの大きさになったらまだ飛べないうちから巣立ちし、その後約2か月は海上で親鳥の保護を受けながら成長していきます。
かつては北海道羽幌町天売島や、松前町渡島小島、ユルリ島、モユルリ島などで繁殖していましたが、今では天売島だけとなりました。
1938年には約40,000羽以上いましたが、2002年には13羽にまで減り、近い将来に絶滅してしまう危険性がすごく高くなっています。
ここまで数が減ってしまった原因は、漁網による混獲、観光による影響、捕食者の増加、エサ資源の減少などではないかと言われています。
1960年代から70年代にかけて盛んに行われたサケ・マス流し網漁業による混獲でたくさんのウミガラスが犠牲となりました。それ以前にもニシンの乱獲によって凶漁となった時期、ウミガラスが激減した時期と一致しています。
魚類を捕りすぎてしまった結果、魚をエサとする海鳥や海獣も食糧難となりその数が減ってしまいました。
他にもウミガラスの天敵であるオオセグロカモメやハシブトガラスが増え、卵や雛が捕食されやすくなっってしまったことなどが原因にあります。
このまま絶滅してしまわないように、デコイという鳥の模型や音声装置を設置して鳴き声を流して繁殖個体の誘引等を行ったり、生息状況のモニタリングなどの対策を行っています。少しずつですがヒナの巣立ちに成功するようにもなりました。
こうした活動が絶滅を食い止める大きな一歩となったのでないでしょうか。
またいつの日かウミガラスの群れが羽ばたく姿を見れる日が来てほしいですね。