イトウ

まるで人の名前のようなイトウ。漢字で書くと伊富魚だそうです。また「魚偏に鬼」と書いてイトウと読むという話も聞きますよね。でも辞書にもパソコンの文字にも「魚鬼」という字は載っていませんでした。鬼のような魚……なんか少しカッコいいですけどね。

さてこのイトウは、日本では北海道にのみ生息しています。昔は青森など本州北部にも分布していたそうですが、今は北海道の道北や道東の湿地帯の河川や湖沼などに生息するのみです。北海道の南限として道央の尻別川にも生息しているらしいのですが、個体数の減っている現在、どれだけの数が生存しているかは不明です。

イトウは汽水・淡水魚類サケ目サケ科です。そう、サケの仲間なんですね。しかし産卵を終えると死んでしまうサケに対し、イトウは15~20年以上生きて繰り返し卵を産みます。産卵時期にオスは、えらの後ろから尾びれにかけ、とても美しい朱色になることは有名な話です。

イトウは川の上で産卵するため、毎年上流と下流を行き来しなければなりません。それを一生にうちに何度も繰り返すとなると大変なことですね。

生まれてから2年ほどは周辺の地で、林のある曲がりくねった川の岸寄りに住んでいます。特に、浅く流れの緩やかな場所が必要です。成長後は河口近くや下流の深い淵で他の魚を食べて暮らすようになります。

 しかし、至る所で川の直線化工事や、ダムの建設工事、大きな堰を造る工事が行われました。すると川の流れが急になるなどの変化が起き、イトウの生息地はたちまち減ってしまい、産卵場所にも辿り着けない状況が出てきました。そうして北海道のどこにでも、いつでも沢山いるような親しみ深い魚だったイトウが、絶滅の危機にさらされることとなってしまったのです。

イトウは川や湖で生きる淡水魚としては国内最大サイズで、過去に体長2.15m、約26kgの巨大イトウが捕獲されたこともあります。あの顔で2m以上あったら怖いと思うんですが……(笑)

歯は鋭く、アゴの力が強いため小魚やカエル、ヘビなどを食べることもあると言われます。

こんな強そうな魚ですら、急激な環境変化には耐えられないということです。川や湖などの「主」と呼ばれたイトウが、本当に幻になってしまうのは非常に残念です。そうさせないためにも、これ以上の環境破壊を起こさないことと、メーター越えにこだわって乱獲をしないことです。

巨大なイトウは釣り人にとって伝説であり、夢や憧れであり、ライバルです。私も北海道に住む者として、釣りをする時は巨大イトウを狙いたいと考えていました。北海道旅行に来た友人も、せっかくこの地に来たからにはイトウに出会えないかと観光そっちのけで釣りに行っていました。

しかし、それは健康な環境状態の中に、豊富なイトウがあってこその話です。現在のこの貴重なイトウに手を出すのではなく、イトウの危機を救った後、この北海道の地に沢山泳ぎまわるイトウと勝負がしたいものです。

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